乳がん治療中に避難されている方へ―治療法別の注意点

コラム

乳がん治療中に避難されている方へ―治療法別の注意点

2026.07.29

地震などの災害により、避難所や車の中で過ごさなければならない場合、乳がん治療中の方は、治療内容に応じた体調管理が必要です。

避難生活における熱中症・脱水症、エコノミークラス症候群の予防、オンライン診療については、前回のコラム「地震により被災された乳がん治療中の皆さまへ」でご案内しています。

今回は、ホルモン療法、分子標的治療、抗がん剤治療、手術後の方に、それぞれ注意していただきたい点をお伝えします。

避難時に確認しておきたいこと

避難する際は、可能であれば次のものをお持ちください。

  • 現在服用しているお薬
  • お薬手帳や薬袋
  • 診察券、健康保険証、マイナンバーカード
  • 治療内容や医療機関の連絡先が分かるもの
  • 体温計
  • 手術後の処置やリンパ浮腫ケアに必要な物品

お薬手帳がない場合は、お薬や薬袋をスマートフォンで撮影しておくだけでも役立ちます。

点滴治療を受けている方は、薬の名前、最後に治療を受けた日、次回の治療予定日を分かる範囲で記録しておきましょう。

お薬を自己判断で中止・減量しないでください

災害によって予定していた受診や治療が難しくなっても、お薬を自己判断で中止したり、残りの薬を長く持たせるために服用回数を減らしたりすることは避けてください。

一方、発熱、下痢、嘔吐、食事や水分がとれないなどの体調不良がある場合には、一時的な休薬が必要となる薬もあります。主治医から休薬の基準を説明されている場合は、その指示に従ってください。

判断に迷う場合は、かかりつけ医、避難所の医療スタッフ、薬剤師、または当院へご相談ください。

ホルモン療法中の方へ

タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬などのホルモン療法は、基本的に毎日継続する治療です。体調に問題がなければ、指示されたとおりに服用を続けてください。

タモキシフェンを服用している方は、特に血栓症に注意が必要です。アロマターゼ阻害薬ではタモキシフェンより血栓症のリスクは低いとされていますが、避難所や車中泊では、脱水や運動不足、長時間同じ姿勢を続けることが重なるため注意が必要です。

また、ホルモン療法によるほてりや発汗がある方は、暑い環境で体調を崩しやすくなることがあります。できるだけ涼しい場所で休み、衣服を調整してください。

薬を紛失した、残りが少ない、服用を続けてよいか分からない場合は、自己判断で調整せず、医師または薬剤師へご相談ください。

分子標的治療中の方へ

分子標的治療薬には、内服薬と点滴薬があり、薬によって副作用や休薬基準が異なります。

乳がん治療で使用されるCDK4/6阻害薬では、白血球や好中球の減少、下痢、肝機能障害などが起こることがあります。ほかの分子標的治療薬でも、発疹、口内炎、血糖値の上昇、肺障害など、薬ごとに注意すべき副作用があります。

次のような症状がある場合は、早めに医療スタッフへ相談してください。

  • 発熱や悪寒
  • 下痢が続き、水分を十分にとれない
  • 強い倦怠感
  • 息苦しさや空咳
  • 急速に悪化する発疹
  • 強い口渇や尿量の増加
  • 意識がぼんやりする

発熱や下痢などがある場合の服用・休薬方法は、薬によって異なります。あらかじめ説明を受けた対応方法に従い、判断に迷う場合は医療機関へ確認してください。

抗がん剤治療中の方へ

抗がん剤治療中は、白血球や好中球が減少し、感染症にかかりやすくなっている場合があります。

避難所では多くの方が同じ空間で過ごすため、可能な範囲で次の感染対策を行いましょう。

  • こまめに手を洗う
  • 人が多い場所ではマスクを着用する
  • 咳や発熱のある方との近距離での接触をできるだけ避ける
  • 十分に加熱された食品を選ぶ
  • 口の中を清潔に保つ
  • 傷や皮膚の汚れをそのままにしない
  • タオル、コップ、歯ブラシなどを共用しない

発熱、悪寒、息苦しさ、強いだるさなどがある場合は、速やかに医療スタッフへ相談してください。

点滴治療の予定日に受診できない場合も、危険な道路を通って無理に移動せず、まず治療を受けている医療機関へ連絡してください。状況に応じて治療日を調整できる場合があります。

免疫チェックポイント阻害薬による治療中の方へ

乳がん治療では、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)などの免疫チェックポイント阻害薬を使用することがあります。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用は、治療当日だけでなく、治療から時間がたってから現れることがあります。

次のような症状がある場合は、避難生活による疲れや暑さのためだと決めつけず、早めに医療機関へご相談ください。

  • 息苦しさ、空咳
  • 強いだるさや食欲不振
  • 繰り返す嘔吐や下痢
  • 頭痛、めまい、意識がぼんやりする
  • 動悸
  • 尿量が極端に増える、または減る
  • 皮膚や白目が黄色くなる

免疫チェックポイント阻害薬による副作用は、早期の診断と治療が重要です。治療を受けていることが分かるカードや説明書をお持ちの場合は、避難時にも携帯してください。

手術後の方へ

手術後間もない方は、傷を清潔で乾いた状態に保ち、強くこすったり、不衛生な水で洗ったりしないようにしてください。

次のような変化がある場合は、医療スタッフへ相談してください。

  • 傷の赤みや腫れが強くなる
  • 傷から膿や多量の液が出る
  • 出血が止まらない
  • 痛みが急に強くなる
  • 発熱がある
  • 乳房やわきが急に腫れてきた

手術をした側の腕や皮膚に傷ができないように注意し、虫刺され、やけど、切り傷などをできるだけ防ぎましょう。

リンパ浮腫がある方・リンパ節手術後の方へ

弾性スリーブなどを使用している方は、皮膚の状態を確認しながら、これまで指導された方法で着用してください。暑さや発汗によって皮膚トラブルが起こりやすくなるため、皮膚を清潔に保つことも大切です。

腕の急な腫れ、赤み、熱感、痛み、発熱がある場合は、リンパ浮腫の悪化や蜂窩織炎の可能性があります。早めに医療機関へ相談してください。

お薬の保管について

お薬は、直射日光が当たる場所や高温多湿になる車内を避け、できるだけ涼しく乾燥した場所に保管してください。

薬によっては冷蔵保存が必要ですが、凍結させてはいけないものもあります。保冷剤を薬へ直接当てず、保管方法が分からない場合は薬剤師へ確認してください。

水にぬれた薬、変色・変形した薬、保管状態が分からない薬は、自己判断で服用せず、医師または薬剤師へご相談ください。

治療を続けられるか不安なときはご相談ください

災害時には、通常どおりの治療を受けられないことへの不安も大きいと思います。しかし、危険な状況で無理に医療機関へ向かう必要はありません。

まずはご自身とご家族の安全を確保し、治療日やお薬については、かかりつけ医療機関、避難所の医療スタッフ、薬剤師などへご相談ください。

不安な日々が続いていることと思います。治療中の体調やお薬について心配なことがありましたら、いつでもお電話頂けるとよいかと思います。ご連絡お待ちしております。

あまくさ乳腺クリニック

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