第33回日本乳癌学会学術総会に参加して

コラム

第33回日本乳癌学会学術総会に参加して

2025.08.08

~最新知見と患者さんへのメッセージ~

学会テーマ:「アジアと欧米の違い – Bridging across the Pacific」

2025年7月10日~12日、新宿の京王プラザホテルと工学院大学で開催された第33回日本乳癌学会学術総会に参加しました。
今年のテーマは「アジアと欧米の違い – Bridging across the Pacific」。海外で得られたエビデンスを、日本の医療体制・文化・遺伝的背景に合わせてどう活用するかという、非常に重要な視点が示されました。
会場は医師だけでなく、乳がんの診療に携わる多様な立場の医療者や患者さんなど、多くの参加者で熱気に包まれていました。

その他、今回特に印象に残ったのは、患者さんのライフステージや価値観に寄り添う多彩なセッションです。

AYA世代の乳がん診療では、若くして診断を受けた方が直面する、学業・キャリア・恋愛・結婚・出産といった人生の節目にどう寄り添うかが活発に議論されました。妊孕性温存の最新情報や、治療後の妊娠・出産の安全性についての報告もあり、希望を持って治療に臨める内容でした。

治療中の仕事をテーマにした発表では、就業中の患者さんが安心して治療を続けられるよう、テレワーク導入や職場復帰プログラムの事例が紹介され、現実的で心強い提案が多くありました。

また、アピアランスケアのセッションでは、脱毛・眉毛やまつ毛の変化、爪や肌のトラブルといった外見の変化にどう対応するかを、多職種が連携して支える事例が印象的でした。ウィッグや医療用アートメイク、スキンケア指導など、外見の自分らしさを守る取り組みが、患者さんの心の支えとなっていることが改めて実感されました。

さらに、HBOC(遺伝性乳癌卵巣癌症候群)に関して、BRCA1/2遺伝子変異の検査体制、予防的乳房切除や卵巣・卵管切除の適応、遺伝カウンセリングの重要性が共有されました。HBOCと診断された方が安心して生活できるためのフォローアップ体制や、ご家族への情報提供の在り方についても議論され、日本でも一層の体制整備が必要であると感じました。

他にも、臨床試験への参加支援や、個別化医療の最新知見など、明日からの診療に直結する学びが数多くありました。

患者さんへのメッセージ

今回の学会で改めて感じたのは、乳がん治療は「がんを治す」だけでなく、「患者さんの人生全体を支える医療」であるべきだということです。
治療と生活、仕事、将来の夢、そして外見の自分らしさ。そのすべてを大切にすることが、より良い治療結果と心の安定につながります。

私たちあまくさ乳腺クリニックは、こうした最新の知見を日々の診療に取り入れ、「あなたらしく生きる」ことを諦めない医療を提供してまいります。

治療中でも、将来の夢や生活の希望を持ち続けてほしい。そんな想いで、これからも学び続け、寄り添い、共に歩んでいきます。